岡山ずし(岡山県)

江戸初期から伝わる伝統的なちらしずし。
「魚h叫ずし」「祭りずし」ともいう。
 すしご飯の巾に混ぜAnわせる兵は野菜が
中心で、にんじん、ごぼう、かんぴょう、
はすなど多彩。春はたけのこ、ふき、わら
び、秋はさといも、まつたけなど、季節の
山の宰もふんだんに人る。しかし、臼を見
張るのが、ご飯の上にのっている海の辛。
瀬戸内海に伽しているという地理的条件を
生かし、酢じめのさわら、ままかり、えび、
いか、あなごなどの魚介類が並ぶ。さらに、
その上に錦糸卵がちらされる。
 全回でも有数の豪華なちらしずしである
が、誕生の由来には庶民の知恵がしのばれ
る。時の藩主池田光政の「一汁一菜」とい
う節約令に対して、庶民が祭事の一業とし
てあみ出したのがこの料理。
 
 魚島ずしの名は、春五月、瀬戸内の魚が
産卵のために集まり、島のように浮き上が
って見える「魚島」からとったもの。また、
祭りずしの名は、具や飾りものの豪華さ、
にぎやかさを表しているところからついた
ものである。

めのは飯(島根県)

島根半島特産のわかめを使った料理。
 松江地方では、板わかめのことを「めの
 は」と呼ぶ。めのは飯は、根わかめを遠火
 であぶって手で細かくもみ、熱いご飯にか
 けただけ、という手軽で素朴なものである。
熱いご飯が磯の香りを引き出し、風味豊か
 で、冷たいご飯ならお茶漬けにしてもよい。
 また、めのはずしは、このもみわかめと
焼き魚の身をほぐしたものとを、すし飯に
混ぜたもの。めのはは、酒の肴にしてもよ
く、もまずに大きいままパリパリと食べて
もおいしい。

 いかにも茶人の不味公の土地らしいのが、
めのはをあぶるための雪洞。これは、和紙
を張った引き出しの下に炭火を入れた箱。
趣があるばかりでなく、ほんのりあぶるた
めに格好のものである。

すずきの奉書焼き(島根県)

江戸時代から伝わる名物料理。

 宍道湖七珍味の一つに数えられるすずき
を、ぬらした奉書紙(上質の和紙)を何校か
重ねて包み、叫灰火で焼いたもの。ぬれた和
紙が火力を抑え、余分な脂肪を吸収するた
め、淡泊で上品なすずきの白身がいっそう
口あたりよく、おいしく仕上がる。
 これを、紅葉おろし、わさびじょうゆ、
煮返しじょうゆのたれなどで食べる。ただ
し、最近では、すずきをまるごとではなく、
うろこと苦玉(肝)をとり除いたうえで奉
書に包み、天火で焼いている。

 すずきの旬は夏で、この時期のものは洗
いや刺身にするが、奉書焼きの季節は冬で
 ある。とくに産卵をひかえた腹太すずきが
 よく、この地方の正月料理に欠かせないも
 のとなっている。
 
 すずきの奉書焼きは、こいの糸造りとと
 もに「不味公料理」の代表でもある。不味
 公とは、茶人としても著名な松江藩主の松
 平不味。漁師たちがいろりの熱灰で蒸し焼
 きにしたすずきを食べているのを見た不味
 公が、これを所望したので、灰がついては
 失礼になるところから、ぬらした奉書紙に
包んで焼いたのが始まりという。

ののこ(鳥取県)

米子から、日本海につき出た弓ヶ浜半島
一帯に伝わる郷土料理。
 山陰地方独特の三角形の油揚げに、ごぼ
う、にんじんの千切りと米を混ぜ合わせて
しょうゆで味つけしたものを詰め、・鍋に入
れてだし汁を加え、ご飯を炊く要領で調理
したもの。田舎風の味と炊きたてを手づか
みで食べるという素朴さが好評で、米子市
では市販されている。
 ののことは、「布子」の転北で、綿入れば
んてんのこと。三角形の油揚げの中で米が
いっぱいにふくれあがった様子が、ののこ
を連想させることから名づけられたものという。

出雲そば(島根県)

江戸時代後期から伝わる出雲名物のそば。

 小さな丸い朱塗りの琴割手に入れて食
べるので、「割子そば」ともいう。

 出芸そばの特徴は、外皮、甘皮、枝芽な
どすべてひいて作った「ひきぐるみ」と呼
ばれるこしの強い、色の黒い田舎そばであ
る。見かけはあまりよくないが、そばの香
味は実は甘皮にあるので、風味は豊かであ
り、栄養価も高い。

 つゆほ、だし汁を煮立て、牲じょうゆと
みりんで調理した辛‖。これを、三〜五段
慮ねの割子に入ったそばにかけ、のり、ね
ぎ、削り節、みょうが、しそ、わさび、紅
葉おろしなどの薬味で食べる。

 出雲地方では、食べ終わった割子を重ね
て、腰の高さまで積めるようになれば大人
として一人前、といわれている。

なれずし(和歌山県)

南紀州一帯に伝わる郷土料理。
 魚とご飯を長時間発酵させて作るすしで、
独特の発酵臭をもつため「くさりずし」と
もいう。また、和歌山市周辺の地方を上と
し、南紀を下とすることから「下ずし」と
も呼ばれる。
 材料となる魚はあゆ、さんま、あじなど。
まず魚を腹開きにして内臓をとり出し、塩
を詰めて塩漬けにする。約一か月後に塩を
洗い出し、ご飯を詰めて漬け直す。二〇日
から一か月後が食べごろ。
 特徴は酢を使わないことで、酸味は発酵
醸による。昧は、現代風の味になれている
とちょっととまどうが、なれずしには古代
をしのばせる素朴な趣がある。

 なれずしは、「熟れずし」あるいは「馴れ
ずし」と書き、古代のものはご飯と一緒に
漬け込んでも、魚介だけを食べるものであ
った。ご飯も一緒に食べられるすしは、厳
    なまハ一山り
密には生成、生なれ、半なれと呼ばれるも
ので、南紀のなれずしはこれにあたる。

すずめずし(和歌山県)

古くから伝わる紀州の名物すし。
 まだいの幼魚、小だいを使ったすしで、
季節は初夏。紀州では小だいのことを「ち
やりこ」と呼ぶ。桜色の美しい小魚で、て
いねいにうろこをとって背開きにし、塩を
うって酢でしめたものに、すし飯を詰める。

尾がピンと跳ね、すずめが胸をふくらませ
ているような姿から、すずめずしと呼ばれ
るようになった。
 昧は上品で淡泊。小だいに塩と酢が効い
ているので、しようゆは使わず、そのまま
食べる。

 すずめずしは、江戸時代から作られてい
るすしで、初めは自然発酵で酸味を出して
いた。しかし、旬の味を生かすために、塩
を効かせてしめる早ずしに変わったもの。