すずきの奉書焼き(島根県)
江戸時代から伝わる名物料理。
宍道湖七珍味の一つに数えられるすずき
を、ぬらした奉書紙(上質の和紙)を何校か
重ねて包み、叫灰火で焼いたもの。ぬれた和
紙が火力を抑え、余分な脂肪を吸収するた
め、淡泊で上品なすずきの白身がいっそう
口あたりよく、おいしく仕上がる。
これを、紅葉おろし、わさびじょうゆ、
煮返しじょうゆのたれなどで食べる。ただ
し、最近では、すずきをまるごとではなく、
うろこと苦玉(肝)をとり除いたうえで奉
書に包み、天火で焼いている。
すずきの旬は夏で、この時期のものは洗
いや刺身にするが、奉書焼きの季節は冬で
ある。とくに産卵をひかえた腹太すずきが
よく、この地方の正月料理に欠かせないも
のとなっている。
すずきの奉書焼きは、こいの糸造りとと
もに「不味公料理」の代表でもある。不味
公とは、茶人としても著名な松江藩主の松
平不味。漁師たちがいろりの熱灰で蒸し焼
きにしたすずきを食べているのを見た不味
公が、これを所望したので、灰がついては
失礼になるところから、ぬらした奉書紙に
包んで焼いたのが始まりという。