なれずし(和歌山県)

南紀州一帯に伝わる郷土料理。
 魚とご飯を長時間発酵させて作るすしで、
独特の発酵臭をもつため「くさりずし」と
もいう。また、和歌山市周辺の地方を上と
し、南紀を下とすることから「下ずし」と
も呼ばれる。
 材料となる魚はあゆ、さんま、あじなど。
まず魚を腹開きにして内臓をとり出し、塩
を詰めて塩漬けにする。約一か月後に塩を
洗い出し、ご飯を詰めて漬け直す。二〇日
から一か月後が食べごろ。
 特徴は酢を使わないことで、酸味は発酵
醸による。昧は、現代風の味になれている
とちょっととまどうが、なれずしには古代
をしのばせる素朴な趣がある。

 なれずしは、「熟れずし」あるいは「馴れ
ずし」と書き、古代のものはご飯と一緒に
漬け込んでも、魚介だけを食べるものであ
った。ご飯も一緒に食べられるすしは、厳
    なまハ一山り
密には生成、生なれ、半なれと呼ばれるも
ので、南紀のなれずしはこれにあたる。